引き算の介護
介護サービスは、足し算だけではなく引き算も重要と言われます。どういうことかと言いますと、「お年寄りが出来ない事に対してお手伝いすること=足し算」、「お年寄りが自分で出来る事は、自分でして頂きお手伝いをあえてしないこと=引き算」という事です。
5年くらい前に日本政府は介護を「お世話」から「自立支援」にパラダイムシフトすると宣言しました。
パラダイムとは哲学では良く出てくる言葉で、ざっくり簡単に言うと、「その時代で多くの人がそう思う概念」です。「介護=お世話」という現代人のほとんどが思っているパラダイム(概念)を「介護=自立支援」という概念にシフト(変える)すると宣言したわけです。厚労省は介護保険サービスを自立支援に向けて制度を動かしています。
「どういう事?」と思う人の方が多いと思いますが、お年寄りのお世話をするだけでなく、自分で出来る事を少しでも増やす支援をしましょうという事です。それを自立支援と言います。しかし、「言うは易し、行うは難し」です。
お年寄りが自分でする事を見守ると言えば簡単ですが、例えば歩行がやっとできるお年寄りに介助なしで歩いて頂くと転ぶ危険が高かったり、ギリギリ自分で食べれる人は食器や食事の大きさなどに気をかけてあげないと食べれなかったりします。また、施設や病院では、手伝った方が早い!と思い、本来お年寄りが自分で出来る事も介助してしまうケースも多いです。
また、「自立支援」のために「引き算の介護」を適切にできれば良いのですが、アホな人はお年寄りが自分で出来ないことも自分でして頂こうとしたりします。
まだまだ介護保険サービス自体は発展途上です。日本は世界において高齢化が早かったので、先進国の中でも高齢化対策は進んでいる方ではあります。しかし、介護保険制度はできて22年で、まだまだ成長過程の段階です。「介護=お世話、介護=自立支援」ってどちらも必要で、どっちかしかないという事でもありません。
ただ、「お世話すること=足し算の介護」、「自分で出来る事を自分でして頂くこと=引き算の介護」と言われていますので、「あの施設は何もしてくれない!!」みたいな事を言う方がいますが、自分で出来る方にはあえてお手伝いしないようにしてるところもある、という事は知っていただきたいです。
また、この「足し算と引き算」の考え方は、介護に限らず、育児や仕事教育等にもあてはまる考えなんじゃないかなぁ~なんて思ったりもします(;^_^A